つにてんてん

普段は歌うたいです。文章も書きます。

岩崎宏美は私が守る

はじめに

 

音楽やってますなどと言っているわりには、音楽に関することを一度も書いていないことに気づいたので、今回は岩崎宏美さんについて書くことにした。

 

 

雑すぎる言い方で申し訳ないが、歌謡曲が好きである。

特に誰からの影響というわけでもなく昔から好きなので、なにか琴線に触れるものがあるんだろう。

たまに『夜へ急ぐ人(ちあきなおみ)』とか『フライディ・チャイナタウン(泰葉)』とかを聞いては、じいん……となっている。

 

五年ほど前、『思秋期』の素晴らしさに改めて感じ入り、TSUTAYAで『岩崎宏美 ゴールデン☆ベスト』というアルバムを借りた。

 

 このアルバムの16曲目に収録されている、『春おぼろ』。

イントロのリフに撃ち抜かれた。

私は、この曲がとても好きだ。間違いなく、とても好きなのだ。

 

が、何度聞いても、何度考えても、どうしても、どうしても、この曲に物申したい気持ちが抑えきれない!

 

それでは、岩崎宏美への熱い想い、聞いてください。

 

『春おぼろ』への勘違い

 

ものすごくざっくり言うと、『春おぼろ』は「父親に反対されたため、恋人との結婚が許されず、悲しい」といったような内容の歌である。

 

さて、私が悶々としているのは、二番のサビの歌詞、たった一行について。

 

父親に追い返され、帰路で黙り込んでしまった恋人に対してのモノローグがこれだ。

「怒っているでしょ ぶってもいいのよ」

 

五年前の私は、思った。

 

なぜ、なぜなの宏美!!!!?!?

なぜ恋人を盾にするの!!!??!?

なぜ己の拳で戦わないの!!!?!???!!?

と。

 

たぶん大半の方が「こいつは何を言っているのか?」と思っているでしょうから、解説をします。

つまり、私は「怒っているでしょ ぶってもいいのよ(父を)」と解釈したのです。

 

じゃあ宏美、あなたの怒りや悲しみはいったいどこへ行くの!??

ぶつのなら、あなたが、自分の拳で、お父さまをぶちなさい!!!!!

そして、あなた自身の手で結婚を勝ち取りなさい!!!!!!

 

その後もう脳内で宏美を鼓舞することしか考えられなくなり、数週間悩んだ末に、やっと自分の誤解に気づいた。

もしかして、これ、「ぶってもいいのよ(私を)」ってことなんじゃないのか……

 

またしても私は煩悶した。

 

どうしてなの宏美!!!!!どうして彼があなたをぶつの!!??

そんなことでぶつような人間と結婚しようとしているの!!!????!?

もし彼があなたをぶったら、十倍にしてぶちかえしなさい!!!!

なに、できない?

じゃあいい、私がやる!!!!!!!!

宏美は、私が守る!!!!!!!!!

 

こうして、私は宏美のモンスターペアレントになる。

なぜ私が先んじて彼に暴力を振るう必要があるのだろう。

それはまごうことなき犯罪だ。

分かっている。

分かっているのに、宏美のことが心配でたまらない。

 

ねえ宏美、なにがあなたにそんなことを言わせたの?

万が一にでもあなたをぶつかもしれないような人と結婚してほしくないの、彼にならぶたれてもいいだなんて言うあなたを見ているのはとてもつらいのよ!

おねがい、どうか幸せになって、彼のためじゃなく、自分のために幸せになって!

きっと、きっとよ宏美……!

 

なにが宏美にそんなことを言わせたか

以上が、『春おぼろ』をめぐる、私と宏美の因縁のすべてである。

 

この曲を聞くと、どうも岩崎さんとの距離感が完全におかしくなる。

後追いかつ超ライトなただのファンという立ち位置から、血の涙を流しながら両肩を掴んで揺さぶるくらいの超近距離にジャンプしてしまう。

 

改めて問おう。

宏美に「ぶってもいい」だなんて言わせたのは、いったいなんなのだ。

 

作詞は、山上路夫さん。

合唱曲で有名な『翼をください』や、『夜明けのスキャット』、『瀬戸の花嫁』などを手掛けられた、ものすごい方である。

 

では、山上さんが「ぶってもいいのよ」を言わせたのか?

歌詞を書いた張本人なのだからそれはその通りなのだが、それでは答えとして不十分だ。

山上さんはプロの作詞家として、求められる言葉を差し出したのだろう。

 

16枚目のシングル『春おぼろ』が発売されたのは、1979年2月5日。

岩崎さんは1958年11月生まれだそうなので、リリース当時は21歳。

※「岩崎宏美 オフィシャルサイト」(http://www.hiroring.com/)より

 

岩崎さんが「ぶってもいいのよ」と歌ったのは、21歳の彼女を通して「ぶってもいいのよ」的な女性像を打ち出すとウケたから、なのだろう。

なので、宏美にそんなことを言わせたのは当時の社会ぜんぶと言っても過言ではない。

 

時代だねえ、と言ってしまえばそこで終わりの話ではあるのだけれど、私とてそんなことで黙るような人間ではない。

1979年だろうが2017年だろうが、宏美には幸せになってもらわなきゃ困る。

 

『春おぼろ』の宏美が、その後どうなったかは分からない。

が、「いや、ぶたれるのはだめでしょ……」くらいは思えるようになっていてほしいと切に願うばかりである。

 

おわりに

 

意外とまじめなところに着地してしまって、自分でも驚いている。

 

『春おぼろ』はこの映像がすてき!

岩崎さん、大好きです。

今更になって大言壮語すぎるタイトルが恥ずかしくなってきたけれど、しかたない!